抱っこすることで泣き止むメカニズム

その1 愛情を深める

オキシトシンの由来

オキシトシンの名前の由来は「迅速な出産」という意味のギリシャ語で,1906年イギリスのヘンリー・デールという脳科学者によって発見されました。
脳下垂体をすりつぶした液体に陣痛を引き起こすことを発見し,
出産を速める物質が含まれていると考え,オキシトシンと名付けたのです。

 

その後,オキシトシンは母子関係の愛着の絆を深める上で大きく影響を与える物質であることも分かってきました。

動物を使用した実験で,子供を生んだことがないメスのラットに,

オキシトシンを投与すると巣作りや子供をなめるといった母性行動を行ったり,

乳が出ないにも関わらず授乳するような行動を見せたという研究データもあります。

 

人間もオキシトシンが分泌される

人間の場合も,子供に授乳したり,抱っこなどの皮膚接触を行っている時にオキシトシンの分泌が増加していることが分かっています。
だからこそ,子供を抱っこしたりしている時,幸せな気持ちになったり,子供を愛おしく感じるのではないでしょうか。


このオキシトシンをつくる細胞は,生後早い時期に形成されます。

そのため,親から触れられた経験の多い子は,そうでなかった子よりもオキシトシンの量が多いとの報告があります。
よって乳児期の触れ合いは子供の心身の発達にも深く関わる行為であることが言えます。

 

なお今までの話で,オキシトシンの分泌は母親と子供だけに限ってのことと思われた方もいるかもしれませんが,オキシトシンは男性でも分泌されます

わが子のおむつを替えたときや「たかいたかい」などの触れ合いを行うことで,オキシトシンが分泌され子供との絆が深まるのです。

その2 ストレスに強くなる

オキシトシンには心理的ストレス時の恐怖,不安,怒りや「ストレスホルモン」といわれるコルチゾールの分泌を軽減するといった論文が多数あります。

 

オキシトシンとストレスとの関係

実際にオキシトシンとストレスとの関係について,アメリカのウィスコンシン大学で行った実験で,7歳~12歳の少女61人に大衆の前でスピーチコンテストを実施するというものがあります。

この実験は,スピーチコンテストをする前の少女たちを3つのグループにわけて,それぞれ違うことをしてもらい,分泌されるオキシトシンとコルチゾールを測定しました。

 

  • 1番目のグループには母親から抱きしめられるなどのスキンシップによる励ましを受けました
  • 2番目のグループには母親とのスキンシップせず電話で話をしました
  • 3番目のグループには母親とは全く接触させずに差し障りのない映画を75分間鑑賞しました

 

この結果,どのグループもスピーチ終了直後のコルチゾール濃度はストレスにより急激に増加していました。
しかし,母親に抱きしめられたグループでは、オキシトシンの値が最も高く30分後にコルチゾール分泌が正常に戻りました。

電話で母親と話したグループでは、二番目にオキシトシンの値は高かったものの1時間後にコルチゾール分泌が正常値となりました。

 

一方、母親と全く接触しなかったグループでは、オキシトシンの分泌はあまり見られず,1時間後でもコルチゾール分泌は通常より30%以上も多く,ストレス状態か続いていたという結果になりました。

 

この結果から,抱きしめられるという触れ合いによって,オキシトシンが分泌されストレスが軽減されたことが示されました。
このような結果から,オキシトシンはストレス軽減に非常にかかわっていることが分かってきています。

その3 脳を育てる

脳は大人の体重で2.5%の重さを占める臓器です。
生まれたばかりの赤ちゃんの脳は体重比でいうと15%という非常に大きな割合を示しているのが特徴です。

この脳の成長は生まれた後の環境に大きく影響されるといわれており,そのカギを握っているのが「セロトニン」という脳内物質なのです。

 

このセロトニンが支配している脳神経系には認知,記憶をはじめとする姿勢の維持,手足の動き,呼吸,睡眠,食欲,自律神経の働き,性ホルモン,情動(不安を抑える動き)など様々な脳機能をつかさどっています。

いわばセロトニンは脳の司令塔であり,セロトニンが分泌されやすい脳のネットワークを作ることが,安定化した体と心の発達に繋がるのです。

 

だからこそ脳の成長にはセロトニンがカギなのですが,セロトニンを活性化するにはオキシトシンの存在が重要になって来るのです。

赤ちゃんの時から沢山抱っこされたり,触れ合うことでオキシトシンの影響を非常に受け,セロトニンが出やすい脳となります。
それが一生続くこととなるので,幼少期の触れ合いは脳を育てるうえで重要なことなのです。

その4 記憶力や集中力が高まる

抱っこや触れ合いをするだけで子供が賢くなるとはなんと素晴らしいことでしょうか。
そんなことがあるのかと思われる方も多いと思いますが,実際にオキシトシンを用いた動物実験で学習能力の向上が確認されています。

実験の内容としては,今までいくらやっても向上しなかったラットの危機回避行動が,オキシトシンを注射したことで危機回避に関する対処法を学習し,回避できるようになったというものです。

 

また,そこで得た記憶は数日間残っていたことから,オキシトシンは短期の記憶力の高まりと,学習能力の向上に関与することも分かったのです。

記憶力を向上させるためには集中力が必要となってきますが,オキシトシンが分泌されることで,心身がリラックスし,目の前のことに集中できるようになり,その結果記憶力が上がり,学習意欲が増していくのです。

この事実は本当に親の立場からするとうれしい効果と言えるのではないでしょうか。

その5 成長を促す

オキシトシンが分泌されると自律神経の副交感神経が優位になり,心身がリラックスします。
それによりストレスからくる不調にも対応でき,体にも良い影響をもたらします。

実際に未熟児で行った研究で下記のようなデータがあります。

 

アメリカのマイアミ大学内にあるタッチリサーチ研究所のフィールド博士によって1986年に、早期産児(未熟児)の赤ちゃんに1日数分のタッチケアを行ったグループと、タッチケアをしなかった赤ちゃんのグループを比較検討し、タッチケアを受けたグループが47%も体重増加が見られ、6日も退院日が早まったという研究を発表しました。

この研究からは、早産児へのタッチケアが、体重の増加や消化機能の改善、ストレスの軽減などへの効果があることがわかりました。

 

また超低出生体重児をはじめハイリスクな状態にある新生児のケアをおこなっているNICU(Neonatal Intensive Care Unitの略で、新生児集中治療室)で実施されているカンガルーケア(皮膚接触型保育)においても,同様な効果が確認されているようです。

そもそもカンガルーケアは 1978 年に南米コロンビアの首都ボゴダで保育器不足の対策から生まれ,低出生体重児の死亡率の低下および育児放棄減少という効果が見られたことから世界的に注目を集めるようになったといわれています。

 

一方,日本におけるカンガルーケアは NICU での母子(親子)関係を支援 したいという思いからスタートし,普及したものです。
カンガルーケアは保育器に入っていた赤ちゃんと母親(親子)の素肌どうしを触れさせ,抱っこする行為ですが,このことによりお母さんの愛着形成にプラスになるばかりでなく、赤ちゃん自身も保育器の中での様々なストレスから解放され,心拍数の変動も小さくなり,成長を促す指数が上がることが分かっています。

 

このように,抱っこや触れ合いを行うことでオキシトシンが分泌され,健康面に良い効果をもたらし,成長にも影響するのであれば,家族みんなで輪になってマッサージをしあうだけでも免疫力アップに繋がるかもしれません。是非試してみてくださいね。

まとめ

2020年は新型コロナウイルスの流行により外出自粛などの制限で家にいる時間も多く,ストレスを抱えてしまうこともあるかもしれませんが,こんな時期だからこそ一呼吸おいて子供へのご褒美にいつもより長く抱っこしてあげる,抱きしめるなどの触れあいを増やすことで家族みんなのストレスが軽減されるのではないでしょうか?

ぜひ素敵な「抱っこ時間」をお過ごしください。

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