赤ちゃんを抱っこしても泣き止まない理由とは?原因と対処法をていねいに解説
抱っこすることで泣き止むメカニズムなどを先のコラムで述べましたが,そうはいっても泣き止まないといったことがあるのではないでしょうか。
この記事ではそもそも赤ちゃんがなぜ泣くのか,泣き止まない時の対処方法などを調べてみました。
目次
赤ちゃんが泣くのはなぜ?
「赤ちゃんは泣くのが仕事だから」といったことを耳にしたことはないでしょうか。赤ちゃんは泣くことでママやパパに自分の思いを伝えています。主にどんなことを伝えたくて泣いているのでしょうか。
理由1 : お腹がすいたから
生まれたての赤ちゃんの胃の大きさはさくらんぼぐらいの大きさで、容量は5~7ml程度しかないと言われています。
生後3日目でくるみ大(容量は22~27ml程度)、生後1週間でもあんず大(容量は45~60ml程度)ぐらいになっていくのです。だからこそ,一度には沢山飲めないためすぐお腹がすいてしまうのです。
口に触れたものを吸いつくしぐさをするなら,お腹がすいたのサインです。
理由2 : おむつが汚れて,気持ちが悪いから
赤ちゃんが泣いたら,まずおむつをチェック。最近のおむつはおしっこを数回しても,おしっこを固めて肌に戻さないという高機能のものが沢山あります。
ただ,ほっておくとムレやかぶれの原因にもなるので,汚れているようならすぐおむつを替えてあげてください。
理由3 : 暑い,寒いから
赤ちゃんはとっても暑がりです。衣類などについては大人のマイナス1枚ぐらいがちょうどいいと言われています。
そして,赤ちゃんは大人の2倍くらい汗をかくほどの汗かっきなので,背中が汗ばんでいる,顔が火照っているようなら,暖房を下げたり,上掛けを1枚減らしてあげてください。
一方,寒いについては暑いに比べて,少し分かりにくかったりします。赤ちゃんは大人よりも体温が高いため,大人が寒くなければ比較的問題ないのですが,赤ちゃんの顔色が白かったり,お腹や背中が冷たくなっている場合は寒いと感じています。
その場合は、すぐに温めてあげてください。
理由4 : 抱っこ,かまってほしいから
赤ちゃんは泣くことで,自分の意思を伝えているわけですから,ママやパパに抱っこしてもらいたい,かまってほしい時も泣いて教えます。
赤ちゃんが泣くごとに関心を示せば「泣くとママやパパもしくはその他の家族が来て,かまってくれる,優しくしてくれる」とのやりとりの積み重ねによって赤ちゃんはコミュニケーションの基本を学んでいくのです。
泣いたときは、「どうしたの?」「大丈夫よ」などの声がけをしてあげながら,あやしてあげてください。
その他にも急に思い出したかのように泣く場合は,体のどこかが痛いやかゆい,ゲップやオナラが出ないなど体調の不調を訴えていることもあるので,慌てずに全身をチェックすることで様子を見てあげてください。
意味なく泣いている時期がある?!
何かしら理由があって泣いている場合は,赤ちゃんが気になっていることを解決してあげれば泣き止みますが,何をやっても泣き止まないということもあるのではないでしょうか。
そんな時は親として病院に連れて行った方がいいのかと心配になったり,自分自身の対応が悪いのではないかと自分を責めてしまうこともあるかもしれませんが,実は赤ちゃんは泣くことを仕事としているからこそ,意味なく泣いている時期があるのです。
パープルクライングという時期
これまでの研究で,生後2週間ごろから生後1~2か月をピークに5か月ごろまで親や家族の関わり方に関係なく何をやっても泣き止まない時期があることが分かりました。この時期を「PURPLE Crying(パープルクライング)」といいます。
パープルクライングは次の6つの特徴の頭文字をとって,「パープル(PURPLE)クライング」と名付けられました。
P:泣きのピーク(Peak of Crying)
生後2週間から4-5か月の赤ちゃんの泣き曲線
(引用:http://purplecrying.info/img/crying-curve.png)
生後2か月前後のピーク時に,多く泣く赤ちゃん(濃い紫色)は一日に5~6時間泣き,泣きが少ない赤ちゃんでも20-30分は泣く傾向があることが分かっています。しかし,ピークを過ぎれば泣きはだんだんと収まっていくのが特徴です。
U:予想外(Unexpected)
とつぜん泣き出し,とつぜん泣き止みますが、どちらも原因はわかりません。
R:なだめても抗う(Resists soothing)
どんなふうになだめようとしても泣き止みません。
P:痛そうな表情(Pain-like face)
泣いているときは、痛みの原因がなくても痛そうに見えることがあります。
L:長く続く(Long lasting)
泣きは1日に最大5時間、またはそれ以上続くこともあります。
E:夕方から夜にかけて(Evening)
午後遅くや夜によく泣くことがあります。
何をしても泣き止まないことは親として心配だったり,イライラすることもあるかもしれませんが,自分の赤ちゃんだけでなく,どの赤ちゃんでも意味なく泣いている時期があることを理解することが大事だと思います。
泣き止まない時の対処法
どの赤ちゃんでも意味なく泣いている時期があることは納得できたけれども,やはりずっと泣きっぱなしは子育てしている側としてはつらい状況です。そこで,泣き止まない時の対処法をまとめてみました。
対処法1 : 赤ちゃんにお母さんのお腹にいたときを思い出させる
1.おくるみに包む
2.「シー」という音を聞かせる
3.ビニール袋をくしゃくしゃさせる
手足が動くと落ち着かない赤ちゃんもいるので,お腹の時にいた状態を再現するためおくるみで包んでみたり,お腹の中にいた時のお母さんの血管の音に似ている「シー」という音やビニールのくしゃくしゃした時の音を出してためしてみる。
対処法2 : ドライブや外に散歩に出かける
気分転換に外を散歩してみるやドライブに出かける。車の心地よい振動で泣き止むことも。
対処法3 : 周りの人に協力してもらう
お母さん一人で対処しようとせず,抱っこしないと泣くコラムにも記載しましたが,お父さんや周りの家族などにも協力してもらい,状況を共有することが大切。
対処法4 : ちょっと離れてみる
寝不足や疲れなどでイライラが募った時は,赤ちゃんを安全なところにおいてちょっと離れてみるのも手です。お茶を飲んだり,音楽を聴いてみたりなど,少し気分が落ち着いたら赤ちゃんの様子を見てあげてください。
絶対やってはダメなこと
赤ちゃんが何をやっても泣き止まないとしても,ピークが過ぎれば必ず泣く量は徐々に減っていきます。泣き止まないからといって,強く揺さぶることをしてはいけません。
赤ちゃんの脳はとても柔らかく、ダメージを受けやすいのです。体に比べて頭が大きく首もすわっていないため,激しく揺さぶられると首がしなって、頭の中に大きな回転力がかかり頭蓋骨と脳が大きくずれてしまいます。
そのため、脳のまわりの血管や脳の神経が引きちぎられてしまうことがあるのです。これを「乳幼児ゆさぶられ症候群」といいます。
「乳幼児ゆさぶられ症候群」は将来的に言語障害や学習障害、歩行困難、失明を起こすことがあり、最悪の場合死に至ることさえもあるのです。
注)乳幼児ゆさぶられ症候群は「たかいたかい」や、車のチ ャイルドシート、横向きの抱っこであやす程度のゆれではなりません。
まとめ
今回コラムを書いていて,実は私自身パープルクライングという時期があることを初めて知りました。
娘が赤ちゃんのころ,泣き止まない時はお腹に口を当てて,お腹を振動させて泣き止ませたり,歌を歌ってみたりなど色々なことを試しました。
それでも泣き止まない時はどこか調子が悪いのではないかと心配になり,服を脱がせて全身を確認したり,熱を測ったり,それでもわからない時はちょっとパニック状態で東京都の「子供の健康相談室(#8000)」に何度も電話していたなということを思い出しました。
この時,パープルクライングという時期があることを知っていれば,もっと落ち着いた対応できたかもと今更ながらですが思いました。
どの赤ちゃんにも,何をやっても泣き止まない時期はあります。やがて成長していくと,泣く量も減っていくので,そういう時期であることを知って対応すると気持ちも楽にならないでしょうか。
「参考」
Ronald G. Barr, “What is the Period of PURPLE Crying?”
http://purplecrying.info/what-is-the-period-of-purple-crying.php
Ronald G. Barr, “Why This Crying Is Normal”, “Why Does My Baby Cry So Much?”
http://purplecrying.info/crying.php
厚生労働省「赤ちゃんが泣き止まない 泣きへの理解と対処のために」